YouTube 最高製品責任者 ニール モーハンによる解説:YouTube ショートが誕生して以来、YouTube で動画を視聴、作成する方法が大きく変わりました。リリース時、YouTube ショートはモバイル端末での動画の視聴や作成に最適化されていましたが、この度、現在最も急速に成長している視聴形態であるテレビ画面への対応を行うに至りました。テレビ画面への対応は簡単に見えるかも知れませんが、モバイル端末用に最適化された縦型の動画フォーマットを大画面に適応させることは容易ではありませんでした。今回のイノベーション シリーズは、この挑戦を成功に導いたユーザー エクスペリエンス(UX)デザイン部門をリードした Brynn Evans と Melanie Fitzgerald よりご案内します。
本日より、 YouTube ショートの動画をご家庭のテレビで順次視聴できるようになります。モバイル端末向けの縦型の動画フォーマットをテレビに適応させる取り組みの舞台裏をご紹介します。
変更前
変更後
企画段階の振り返り
YouTube ショートチームとテレビチームのプロダクト マネージャー、エンジニア、デザイナーおよびリサーチャーが一堂に会し、この試みの実現に向けて議論しました。重視したのは、モバイル デバイスでショート動画を見るときと同じ視聴体験を提供しつつ、テレビの大画面で自然に動画を表示できるようにするという点でした。
好き、嫌い
視聴者がテレビでショート動画を視聴する際に、期待する体験を理解するため、YouTube はこれまでにない調査方法を実施しました。調査の参加者に、テレビで視聴したショート動画に関する気持ちを「ラブレター」か「別れの手紙」のいずれかの形式で表現するように依頼しました。
「ラブレター」からは、お気に入りのコンテンツを友人や家族と気軽に視聴できるという体験を視聴者が高く評価していることがわかりました。一方、「別れの手紙」からは、動作がぎこちない、読み込みが遅い、共有などの主要な機能が不足している、と視聴者が感じていることが読み取れました。頂いたコメントの例として、次の 2 つをご紹介します。
ラブラレター:「実際に出会うまでは疑っていたけれど、正直、あなたは私が求めていると気付いてすらいなかったものを見せてくれました。大画面で迫力ある快適な視聴体験を与えてくれました。」
別れの手紙:「まだ付き合う準備ができていない気がします。もっと使い手の気持ちを理解して操作しやすくなってくれると良いんだけれど。」
モバイル デバイスからテレビへの移動
調査の結果、大画面でのショート動画の視聴には、誰かと一緒に視聴するのに便利で、大画面による快適な視聴体験が得られるという、他にはないメリットがあることがわかりました。しかし、縦型動画のプラットフォームという YouTube ショートの本質をテレビの大画面でどうやって維持するかという、デザイン的課題が残っていました。そこで、3 つの全く異なるデザイン コンセプトを作成して検証しました。
オプション A: 一貫性を保つ
オプション B: カスタマイズ
オプション C: 「ジュークボックス」スタイル
YouTube ショート独自の体験を再現するうえで、従来どおりの動画プレーヤー(オプション A)、動画の左右に空白が表示されないようカスタマイズしたもの(オプション B)、そして、「ジュークボックス」スタイル(オプション C)というまったく異なるオプションの中から検討しました。「ジュークボックス」スタイルは、テレビ画面の広い表示領域を活用して、複数のショート動画を同時に画面に流すという案でした。
再度調査を行ったところ、従来との一貫性を保った動画プレーヤー(オプション A)では YouTube ショートで本来得られるはずのワクワク感が失われ、ジュークボックス スタイル(オプション C)は一度に 1 つの動画だけを流すという YouTube ショートの本質からかけ離れたものになってしまっているという感想が寄せられました。カスタマイズした YouTube ショート用の動画プレーヤー(オプション B)は、すっきりとしたデザインと大画面の広い表示領域の活用を同時に実現し、最も高い評価を得ました。
調査の結果、視聴者は視聴体験を自らコントロールしたいという要求を持っており、次の動画を自動再生するより、リモコンを使って手動で次のショート動画を再生することを好むということもわかりました。これは珍しいことで、通常は、リモコンを使ってそのような双方向的操作を行うのは面倒なものです。しかし、調査結果は、モバイル デバイスでショート動画を視聴するときと同様に、視聴体験の主導権を持つことを視聴者が望んでいることを示唆していました。主導権を持てるのが当然とさえ考えられていたのです。
プロトタイプを使ってテレビ対応の YouTube ショートを構築
設計の最終段階では、カスタマイズされた YouTube ショート動画プレーヤーのプロトタイプを 2 種類試作しました。どちらも高画質の動画プレーヤーで、最新の調査で得られたフィードバックを反映したものです。これらのプロトタイプにより、純粋な視聴体験と、YouTube ショートや YouTube で期待される機能(コメント、高評価やチャンネル登録などのユーザーからの反応、関連動画の表示など)の適切なバランスを見つけようと試みました。
「シンプル」バージョン
「最大」バージョン
「シンプル」なバージョンのプロトタイプには、サイドバーや YouTube ショートの使用に必要な基本的機能など、最低限の要素のみを組み込みました。「最大」バージョンのプロトタイプには、関連タグやコメントなど、さらに多くの機能が表示され、カラー サンプリングとぼかし処理を施した背景を実装しました。
これらのプロトタイプをコミュニティ内でテストしたところ、「最大」バージョンのプロトタイプの評価が高いことがわかりました。このバージョンはテレビ画面の広い表示領域を有効活用でき、カラー サンプリングされた背景によって洗練された印象を視聴者に与えました。
調査結果を現実のものに
本日から提供を開始する動画プレーヤーのデザインは、「最大」バージョンのプロトタイプを改善したものであり、右側のサイドバーを簡略化しています。今後のリリースで、さらに機能を追加することを計画しています。YouTube ショートの楽しさやユニークさをテレビ画面で違和感なく体験できるデザインに仕上がったと考えています。
YouTube はテレビでの操作を便利にする方法について検討を継続しており、YouTube ショートの体験はさらに充実したものになるはずです。YouTube ショートをテレビに対応させることは、YouTube にとって最も重要な 2 種類の体験を融合させることを意味し、クリエイターと視聴者のどちらにとってもプラスになります。今後数週間のうちに、テレビ(2019 年以降製造のもの)や新型のゲーム機でこの動画プレーヤーを順次利用できるようになります。利用されたご感想をぜひお知らせください。
より包括的で役立つサービスを生み出し続けるうえで、ユーザーからのフィードバックは非常に重要です。YouTube のクリエイター リサーチ プログラムのメンバーになって調査に参加し、協力に対する報酬を獲得しましょう。Google のユーザー リサーチ プログラムに参加して Google のプロダクトやツールに関するフィードバックを共有いただくことも可能です。
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