YouTube は「表現する場所をあらゆる人に提供し、その声を世界中に届ける」というミッションを掲げ、開かれた場であることを前提として運営しています。開かれた場には、賛否が分かれるコンテンツも存在しますが、開かれた議論や、表現の自由は、社会に良い結果をもたらすと考えています。しかしながら、ユーザーの皆さんに安心して使って頂ける環境を提供することも YouTube の最重要事項であるため、「開かれた場であること」と、「コミュニティを守る責任」この 2 つのバランスを大切にしています。このブログでは、YouTube の誤情報・フェイクニュースに関する日本での取り組みについてご紹介します。
誤った情報を削除する
誤情報の対策と聞くと問題のある動画をより多く、より素早く削除することだけが解決策と想像されるかもしれませんが、実際はより複雑で、スピード感だけではなく、慎重さ、公平性、多角的な視点なども求められます。
YouTube は、開設当初から「コミュニティガイドライン」に基づいて動画の削除に取り組んできました。誤った情報に関するポリシーに沿って、誤解を招く、または虚偽が含まれる特定の種類のコンテンツで、深刻な危害を及ぼす可能性のあるコンテンツを削除しています。しかし、このポリシーを適用するためには、明確な事実関係の把握が必要です。たとえば、新型コロナウイルス感染症の医学的に誤った情報に関するポリシーを適用する際、YouTube は日本を含む世界の保健機関や地域の公衆衛生機関の専門家の間で広く合意されている内容に準拠しています。人間による審査と機械学習を組み合わせて、一貫した基準でポリシーを適用し、ポリシーに違反するコンテンツをできるだけ迅速に削除しています。このような取り組みの結果、誤った治療法やデマなどを含む新型コロナウィルス感染症に関連する動画を、約一年半の間に 100 万本以上削除しました。その他、コミュニティガイドラインの適用で削除したコンテンツに関する透明性レポートを四半期ごとに公開しています。
信頼できる情報源からの動画を見つけやすくする
動画の中には、明確にはコミュニティガイドライン違反とならないものの、際どい形で発信するようなボーダーライン上のコンテンツも存在します。そこで、YouTube は、視聴者がより信頼できる情報源からの情報を見つけやすくする事にも取り組んでいます。情報の正確性が特に重要な、ニュース、政治、医療、科学情報などのトピックに関しては、信頼できる情報源からの情報を、検索結果やおすすめの動画として優先的に表示するようにしています。
ニュース
重大なニュースがあった場合は、YouTube のトップページにニュース速報セクションが表示されます。重大なニュースの例は、大規模な惨事、重要な政治的出来事などです。
YouTube でその日のトップニュースに関連するワードを検索すると、検索結果にトップニュース セクションが表示され、報道局の YouTube チャンネルによるニュース動画が紹介されます。
医療 / 健康情報
YouTube で特定の医療 / 健康に関するトピックを検索すると、信頼できる情報源が提供する動画を集めた「医療 / 健康情報セクション」(画像 1) が表示されます。
信頼できる情報源の動画の下部には、「医療 / 健康情報パネル」(画像 2) が表示されます。信頼できる医療 / 健康に関する情報をすばやく選んで視聴できるようにすることを目的としています。
情報に対するリテラシーを高める
動画を視聴したり、発信するユーザーの一人一人が、誤情報・フェイクニュースに惑わされないよう情報を吟味し、取捨選択する力を高められるよう、共に考え取り組んでいくことも、YouTube の大切な取り組みです。
先日、 G7 広島サミットが行われましたが、G7 デジタル・技術大臣会合関連イベントの一貫として、「フェイクニュースと日本 ―私たちにできること・社会としてできること」が開催されました。国際大学 GLOCOM が主催した本イベントには Google も全面的に協力し、経済産業省、総務省、デジタル庁と後援すると共に、 YouTube 日本代表の仲條 亮子が YouTube の取り組みについて紹介しました。
国際大学 GLOCOM 准教授・主幹研究員の山口 真一氏を筆頭にメディアリテラシーについて研究する立場の方々、総務省 大臣官房総括審議官(情報通信担当)の鈴木 信也氏、総務大臣政務官の国光 あやの氏をはじめとする政府の方々、情報を発信する側のメディアやクリエイター、IT 企業、情報の受け手となる学生など、様々な立場の方々が参加し、産官民学一体となって「フェイクニュースの蔓延する社会で私たちに何ができるか」、「フェイクニュースに強い社会を作るには」などの課題について活発な議論が行われました。オフラインとオンラインの両方で合計 260 名が参加した当日のイベントの一部はこちらからご確認いただけます。
パネルディスカッション「フェイクニュースの蔓延する社会で私たちに何ができるか」の様子
また、YouTube 上では、「ほんとかな?があなたを守る」というテーマのキャンペーンを 4 月 25 日から実施しており、ユーザーに向けて、フェイクニュースが自分の日常に潜む問題であると気付くきっかけを作ること、そして、情報との向き合い方について考える機会を提供することを目指しています。若者層に人気の高い 9 組の YouTube クリエイターの協力を得て、「フェイクニュースは身近に存在すること」、「ファクトチェックが重要であること」そして、「安易な拡散が人に迷惑をかけてしまうリスクに繋がりかねないこと」この 3 つのメッセージを伝えるショート動画を作成頂きました。各クリエイターの YouTube チャンネルで配信されているこれらの動画は、配信開始から 24 時間以内に合計で 70 万回以上再生され、現在では 759 万回以上(5 月 22 日時点)視聴され、4,586 以上(5 月 22 日時点)のコメントが寄せられています。動画について「情報元とか調べるとフェイクニュース出す会社とかある程度絞れてくるから、情報元は常に確認するといいよ👍🏻フェイクニュースの拡散はダメ絶対」、「メッセージと笑いのバランスが流石でめちゃくちゃ良いので見てほしい」などのコメントが Twitter で投稿されています。そして本日より、より多くの方に届くよう、9 本のショート動画をまとめた動画を YouTube の広告なども使って拡散していきます。
この取り組みに協力してくださった QuizKnock の伊沢 拓司氏は、参加理由について次のようにコメントしています。「QuizKnock は『情報の面白さ』をひとつの武器としています。しかし、面白さと正しさはときに相反し、短期的な面白さを取ったがゆえに長期的な正しさを失い、多くの人に害をなしてしまう可能性もあります。そうした危険と向き合い続けてきた立場から、お役に立てることがきっとあると思い参加させていただきました。」
また、ファンの方々へ向けて、得た情報を自分なりにきちんと解釈することの重要性について、次のとおりメッセージを寄せてくださいました。「私たちが日頃行っている早押しクイズというのは知識とスピードを掛け合わせることで楽しさを生み出すゲームですが、本来知識というものは即興性と相性の悪いもののように私は考えています。速度重視のメディアや SNS に囲まれる現代において、クイズや QuizKnock から発されるメッセージを相対化し、考える糧にしていただけると幸いです」。
誤情報・フェイクニュースの問題はとても複雑で、どの主張が正しいかを判断するための信頼できる情報源がないことも多々あります。また、誤情報・フェイクニュースを恐れるあまり疑わしいコンテンツは全て削除する、というようなアプローチは、「議論を呼ぶ主張は受け入れない」というメッセージにも繋がり、言論の自由を萎縮させるリスクも伴います。YouTube は、このような視点も持ちつつ、発展を続ける専門的見地を追い求めるほか、継続的な理解を進め、議論を続けていきながら、安心安全に YouTube をご利用いただけるようにこれからも取り組んでまいります。